Jacobin's Memo

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朝日新聞新年企画 - ビリオメディア「衆院選 ツイッター460万件分析」の記事を読んで。何と!自民、民主へのつぶやき数と得票数の関係がイコール。

 

昨日、朝日新聞の朝刊に掲載された「衆院選 ツイッター460万件分析」の記事が、「ビリオメディア」と新しいキーワードを使っていることもあり(ビリオメディアの命名は、1ケ月程前に発表されているが)フェイスブックやツイッター上で騒がれている。その為、氷点下近い強い雨の早朝に10年振り(かな?)にコンビニに朝日新聞を買いに行かなくちゃ!と思わせるモチベーションになったのであった。最近、ビッグデータで少し考えるところがあったというのも理由の一つである。

 

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確かに一面の半分をこの特集に使い、その裏ページも詳細に解説に加えている。また、インパクトを増すために同日に掲載したのかは不明であるが、アメリカ大統領戦でのツイッターによるつぶやき事例、安倍総裁が三木谷社長と会談し「ネット選挙解禁すべき」、韓国大統領選でのスマホでの活躍なども記事になっている。最近、代々木系と呼ばれるクールでリラックスしている素敵な方々のお話を聞く機会があったのであるが、この紙面だけ見れば、彼らも納得できる関心の領域ではないかと思える。『インターネット新聞』 or 『SNS新聞』と言ってもおかしくない構成で、実家のおやじとかこんな新聞をどうやって読んでるのかと疑問になる程である。まさか購読者の年齢で、配れるバージョンが違うとか行動ターゲティングはしてないですよね?それくらいおやじには、チンプンカンプンだと思う。購読者をダイナミックに世代を切り替えているのかな?と思う。

 

ツイッター460万件分析

「支持する」「期待する」などの前向きなつぶやきと、「駄目だ」「嫌だ」との後ろ向きなつぶやきをプラスマイナスし各政党への評価をつけるという方法。恐らく今回の特集記事で一番の注目を得たと思われるプラスアルファ・コンサルティング社が、「前向き」「後ろ向き」のそれぞれ30語を抽出している。

 

【前向きの言葉】「支持する」「期待する」「ぶれない」「マシだ」「まっとうだ」「応援する」「立派だ」「信頼する」「素晴らしい」「投票する」「必要だ」

【後ろ向きの言葉】「駄目だ」「嫌いだ」「嫌だ」「バラバラ」「ひどい」「ぶれる」「悪い」「期待しない」「支持しない」「信頼しない」「投票しない」「無責任だ」

 

かなりストレートな表現の言葉である。半匿名性でつぶやく人も多いのがTwitterであるが、どちらかというと「独り言率」が高い人のつぶやきが集まりやすい調査なのかもしれない。だからこそ正確性があるとも言えそうであるが、次回の選挙でこのビリオメディア対策を取るならステマも出来そうだ。

新聞では、膨大な情報の蓄積である「ビッグデータ」から、460万件のつぶやきを抽出して時系列にして分析したサマリの掲載であるが、特集サイトにある時系列がこと細かに見えるサイトが素晴らしい。この図で表されているリンクのページの下の方にある「総選挙に関するつぶやき調査」が秀逸である。今までコンサルタントがインダストリーの解析に使っていたような、「ツリーマップ」と呼ばれるグラフィックで表現したのは直観的に理解できる。脳内メーカーのように、頭の中にあるイメージに近く感じるのである。

 

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私の中で今回の選挙は、橋下市長と石原前知事、嘉田知事と小沢一郎元代表のプロレス的タッグなど面白い話題があったはずなのだが、出てきては消えるようにいつのまにか話題にしなくなっていた。自分でも、いつから日本維新の会について興味(本来興味は高く無く、世間一般の関心として)を失ったのかと思っていた。本来、嘉田知事の生き様というかキャリアにも関心があったはずだ。それがこのビッグデータで時系列的の政党関連の分析を見て、自分がどのタイミングから関心が薄くなった時期が確認できたのである。私は、12月の第一日曜日は、必ずラグビーを観に行く。その為、この日の前後のカレンダーやイベント、誰と会ったか、会話内容は明確に覚えているのである。なので、時系列的に確認しやすかった。

 

ネガティブなツイート < ツイートしない

12月2日にテレビで橋下市長が「原発フェードアウト、公約ではない」との発言には、それまでの弁舌鋭い橋下市長とのギャップにはビックリした。12月3日に先輩とで飲んだのだが、話題にはしたものの盛り上がらなかった。

 

「フェードアウト、公約ではないってすごいですよね」
「そうだね」
「石原慎太郎と組まない方がよかったですよね」
「そうかもしれないね」
<会話終了....>

 

昔みたいに、先輩でも同僚でも部下でも同じ話題で延々と議論することは少なくなってきてはいる。また、私にしては、元より期待が大きいわけではないので「後ろ向き」の言葉で非難を強める議論をする訳でもなく、興味が激減して、会話も続かないのである。ここを境に、橋本市長の話はしなくなった気がする。この状況が決して私だけではなかったことが、この「ツリーマップ」から見てとれる。11月29日から12月2日までは、日本維新の会に関するツイート数が一番多く、この期間に他の政党からインパクトあるメッセージも出ていないので、ツリーマップと同じように国民のマインドシェアの大きな部分を占めていたと思う。事実、私もそうである。しかし、12月3日を境にして、ツイート数が激減するのである。上述した会話の「フェードアウト発言」のタイミングである。この後、日本未来の党は着実にツイートは増やしてトップの座を奪ったと思われたのも束の間、12月5日の届け出混乱を境に、こちらも激減している。双方とも、決してネガティブなコメントが増えている訳ではなく、何もツイートされない状況に陥るのである。話題にもならないということは寂しいということである。フォロワーが多いソーシャルで影響力がある人は、くどくどとネガティブなことはあまり言わないと思う。仕事上での関係があるフォロワーがいると尚更だ。一度でも失望すると、ツイートが減る傾向にあると言えるのではないか。

 

その後の展開は、第三極の選挙と言われていたが、自民と民主だけが残り、ツイッターの中でも「前向き」「後ろ向き」の二極化の選挙になっていったのである。

 

比例政党別獲得票「率」 ≒ つぶやき数 = 比例政党別獲得票「数」

選挙特番で、「自民党は前回との得票率はほぼ同じ」「決して、有権者の信任を得たのでは無い」と再三説明している。体感的に、的を得ているように思える。しかし事実関係として、「ビリオメディア」の調査で「4党に関するつぶやき数の推移」のデータ推移の累積が、極めて得票数に近いのである。より詳しいデータ解析は「ビリオメディア」取材班にお願いしたいが、自民に関してつぶやいた件数150万件で、得票数はその11.0294倍の1662万票。民主も11.5278倍である。この極めて近い値であることに驚愕する。注目度の高かった維新は12.2634倍。ここでは、「前向き」「後ろ向き」は関係無く、つぶやかれた総数だけだ因果関係だ。確かに地元の小選挙区で、既存政党以外の候補者の知名度が浸透していくに従い、どんどんツイート数は伸びるのであるが、アンチ的なツイートもそれと連動して伸びてきていた。総数として伸びることは、そういうものだと思える。

 

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しかし、未来だけは5.87919倍。つぶやきが得票につながっていない。その理由を知るには、以下の朝日新聞の記事である。 

 

ソーシャルメディアの使われ方を研究した大阪商業大学JGSS研究センターの上ノ原秀晃主任研究員は「未来を熱心に支持する少数の人のつぶやきの割合が多かったと考えられる」と指摘する。

 

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熱心な支持者なのか、ネット上での動員なのか不明であるが、SNS市民には不審がられ、新聞にまで報道されてしまうのはあまりいい効果ではない。嘉田知事の「生活環境主義でいこう!―琵琶湖に恋した知事」は、とても好きな本である。もし本と同じであれば嘉田知事も知的で素敵で、そしてワイルドな魅力を持つ人だと思う。この本の中には、嘉田知事は京都大学の探検部の女人禁制を破って入った部員と書いてあり、何とも言えないロマンを感じるのである。ストレートにもっと多くの人に働きかける要素はツイッターの中でも別の方法があったと思う。

いづれにしでも、数ある予測と比較しても、ここまで得票数と正しい関係性を示すのはツイッターだけだと思う。

 

まとめ

今回の記事は、リテラシーの高いIT, ジャーナリストの方々に注目度が高いだけあり、いろいろな問題提起があったと思う。歴史的なマイルストンになるものかもしれない。しかし私の中で、新聞(紙)の価値が従来以上に高まったかと言うと、この記事もテレビのコマーシャルと同じ、後は「◯◯◯で検索」とウェブサイトに誘導しており、新聞紙面にあるURLで導かれた「ビリオメディア」の特設サイトが素晴らしかったというものである。当初より、この特設サイトがあるのを知っていれば、寒い中新聞は買いに行かなかったと思う。ただ、新聞社は長い歴史と同等に偉大だと思う。これだけの企画力と投資、13名の取材班編成。これから大規模なデータを抱え、ビッグデータアナリストが活躍する情報インテリジェンス企業になるのではと連想させる記事である。

 

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http://p.twipple.jp/G4CIu

 

今回、朝日新聞は10年以上振りに買い、全部しっかり読んだのは大学生以来の経験でした。紙面もバリエーション豊富な記事で、広告も綺麗で、これなら購読しようかと思うのですが、新聞販売員との対話が面倒臭いから絶対購読しないと思う。 それも今は違うのかな? 化粧品会社のCMのように、「自信があるから電話しません」とかしてくれたらいいと思う。いづれにしても、今回いろいろ刺激を受けるチャレンジャブルな特集を組んだ朝日新聞には敬意を表するのである。