Jacobin's Memo

インターネットテクノロジーをグローバルで展開している仕事です。

『100 Fastest-Growing Companies 2012』の詳細

 

『100 Fastest-Growing Companies 2012』で選出された会社を国別で見てみますと圧倒的にアメリカ国内の企業が多いです。隣国のカナダや中国を除けば、6社がそれぞれの国で1社づつの登場です。

 

f:id:hiroxshi:20121008083058j:plain

地図に合わせるとこんな感じ。

f:id:hiroxshi:20121008080009j:plain

 

カテゴリーですが、ほとんどがITインダストリーともいえるTechnologyがトップです。第2位は、一般的には製造業と定義してもいいIndutryが続きます。Health Careは、バイオテクノロジー、製薬業も含まれる分野で、製薬業ではM&Aなど現在でも活発のようです。意外に感じたのが、Energy、Miningが多いということです(ちなみに、Miningは馴染みあるデータマイニングではありません)。それもアメリカ国内の企業ばかりです。テレビでたびたび報道されるような新しいエネルギー関連の成長企業が、躍進していることが読み取れます。Miningの漢字の意味は採鉱; 鉱業で、長年日本では構造不況業種とも言われていた業種ですが、新エネルギーや代替エネルギーを目指す会社が既にこれだけ多く米国内で上場して資金調達していることは改めて驚きました。

 

f:id:hiroxshi:20121008083130j:plain

 

Technologyは、32社中、アメリカが25社、中国が4社、日本、アルゼチン、イスラエルが1社づつです。32社のランキングは以下の通りです。日本では、株式会社インターネットイニシアティブ(略称IIJ)が1社のみ選出されています。IIJは、全体の100 Fastest-Growing Companiesで65位、Technology分野の中では、19位です。ちなみにTechnology分野の3位は、Appleです。Profit growth分野では、57位。先だって、まつもとゆきひろさんが、Newsweekの特集「ネットの支配者100人」に日本人で唯一選出されたことに感動して大騒ぎしてしまったのですが、今回も感慨深いものがあります。

 

< 100 Fastest-Growing Companies - Technology ランキング>

1 Cirrus Logic 

2 Baidu

3 Apple

4 IPG Photonics

5 3D Systems

6 priceline.com

7 Acme Packet

8 TTM Technologies

9 MercadoLibre

10 Hollysys Automation Technologies

11 Opentable 

12 Netgear 

13 Ultratech 

14 VMware 

15 F5 Networks 

16 Coherent 

17 Riverbed Technology 

18 EZchip Semiconductor

19 Internet Initiative Japan

20 Rackspace Hosting

21 Cymer

22 NetApp

23 Lam Research

24 SolarWinds

25 Broadcom

26 NetEase

27 AsiaInfo-Linkage

28 Cognizant Technology Solutions

29 Ebix 

30 Semtech 

31 Super Micro Computer

32 Portfolio Recovery

 

この Technologyの企業を観て選出されたトレンドを一般化することは容易ではないですが、大きな意味でインターネットと親和性の高い企業のように思えます。やはり、クラウドや仮想化、VoIPなどのネットワークテクノロジーをベースにした企業が牽引していると言えます。楽天が中国撤退、ブラジル新規参入したニュースも久しいですが、EC企業も思ったよりグローバル化されていない現実を感じました。その国の商習慣の理解が必要なのか、その企業の現地での既存ビジネスモデルとの相乗効果の強みが不可欠なのか、一筋縄ではいかないのでしょう。参入障壁は低いかも知れませんが、本質的に差別化しづらいのかと感じます。カールフールが鳴り物入りで日本に来たことと同じなのかもしれません。カールフールは、早々に日本を撤退して中国にフォーカスすることを表明しました。この見切りの早さは時間が解決することだけではないことの意味かも知れません。 

この32社は、正直、名前を知らない企業も多かったのですが、チラチラ見る範囲ですが、面白そうな会社が多いので時間ある時に再度ゆっくり見ることにします。

 

フォーチュン誌ランキング - 100 Fastest-Growing Companies

フォーチュン500は、米国フォーチュン誌が年1回編集・発行する企業ランキングです。1955年に、下記のモダンなイラストから始まったようですが、既に57年の歴史があります。

 

f:id:hiroxshi:20121007195025j:plain

 

1929年が世界恐慌の年なので、その翌年の1930年にフォーチュン社が設立されたことになります。そもそも、世界恐慌のトリガーになったのは、アメリカ合衆国ウォール街でのパニックが起因とされていますが、アメリカでは "Wall Street Crash of 1929" と呼ばれていることに先程気が付きました。それだけ先行き不安な時代に、少しでも正確で役立つ情報を投資家が欲しかったものと思われます。

 

フォーチュンランキングで一番馴染みのあるのが、Fortune Global 500です。何となく、国別での社数をオリンピックでのメダル獲得順位と同じように毎年見てしまっている自分がいます。今年は、アメリカ132社(前年133社)、ドイツ32社(前年34社)、日本68社(前年68社)、韓国13社(前年14社)、中国73社(前年61社)となっています。アメリカ・ドイツは減らして、日本が円高効果で踏み止まって、韓国が増加させて、中国が大幅躍進というのは誰しも持つイメージのままの結果と思われます。その他のカテゴリーには、「最も賞賛される会社」「ベストプレース ワーク」「モストパワフルウーマン」など興味深いランキングが紹介されています。今回はその中の一つである「100 Fastest-Growing Companies」のお話です。

 

100 Fastest-Growing Companiesの定義(英語)

 日本語でいえば、急成長企業100社とでも名付けるのでしょうか?この定義を、以下に和訳(英語スキルの欠如はご容赦)にしてみました。

 

 『100 Fastest-Growing Companies』の選考基準(米国内・国外企業)は、米国内の主要証券取引所に上場していること、米国証券取引委員会(SEC)へ四半期レポートを提出している、2012年6月30日現在において時価総額が最低2億5000万ドル(2012年の8月の1$=78.66円とすると196億円)、株価が最低5ドルであること、2009年6月30日以降継続して取引を行っていること。また、2012年4月30日またはそれ以前に終了した4四半期において総売上が最低5,000万ドル(約39億円)、純利益が最低1,000万ドルあるとともに、2012年4月30日またはそれ以前に終了した3会計年度について売上および1株あたり利益の年間成長率が1年(7.86億円)あたり最低15%あることが必要です。

 

最終的にこれらの基準を満たした各企業が売上成長率、EPS成長率、また2012年6月30日に終了した3年間の年間総利益に基づいてランク付けされます。全体的なランクは、これら3つのランクの合計によって決まります。上位100社が絞り込まれた後、等しく加重された3つの変数を使ってさらに100社内でのランクが求められます。ランクが同じ企業がある場合は、4四半期売上の多い方が上位にランクされます。

 

普段あまり注意してこの指標を見ていないのですが、EPSの値からPERを視野に入れて企業評価をしてるのでしょう。そして3年間という期間の中での株式が健全で成長しているかを問われます。計算式は以下の通りです。

 

EPS=(当期利益+利益調整)÷(期中平均株式数+潜在株式数)

PER(ピー・イー・アール; 株価収益率)=株価÷1株益(EPS)

 

『100 Fastest-Growing Companies 2012』の詳細に続きます。

映画「槌音」を見て感じたこと。

 

今日は、3/10。震災一周年の1日前。しかし、普段の土曜日と同じ渋谷の雑踏や喧騒は何も変わらない。道一杯にはみだす若者集団はいつものままだ。そのより奥のラブホテルが林立する円山町の中に、オーディトリウム渋谷がある。今日は、一目散にここを目指していた。

 

上映開始時間が近づくにつれ、岩手県大槌町に縁(ゆかり)がありそうな方、年配の方々、ボランティアや支援活動で大槌町と繋りがあったと思われる方々がどんどん押し寄せて、ロビーが朝の通勤電車並みに混雑していた。「槌音」を見る為だ。大槌町出身の大久保愉伊(おおくぼゆい)監督の作品である。

 

席に着くと、普段の映画館とは全く異なる空気が流れており、皆、呼吸も意識的に静かにしているようだ。映画が始まると、スクリーン一面に震災直後の被害の光景、何故か喉がカラカラになる。震災の凄さなど何もわかっていない自分がここにいる。

 

監督のお父様の膨大な映像なのか、監督が奇跡的に町の外に持ち出していた。昔の楽しい大槌町の風景、祭り、お祝いの日、日常生活などが、荒廃した光景と交互に映されているシンクロニシティ。映像もさることながら、あたりまえの生活感のある音が全く無くなっていることが実感される。日常と非日常の間に感じる虚無感。なかなか感想は、言葉に出来ない。

 

 f:id:hiroxshi:20120310194951j:plain

 

上映後トークショーが開催された。トークゲストは、映画監督の黒田輝彦氏が招待されていた。映画に出てきそうな昔の職業映画人の様で、とても雰囲気がある方で面白かった。黒田監督は、篠田正浩監督の撮影や助手を務めていたが、30歳になり資金稼ぎで遠洋漁船に乗り、その映画を撮ったりしていた。映画は見てもらって報酬が得られるが、その場が得られない。その為、漁港を訪ね歩いて、行き着いたのが大槌町であったらしい。しかも、その話を聞いてくれたのが、音楽家である大久保監督のお父様だったのだ。それ以来、数十年交友を温めているとのこと。不思議な縁がある。

 

また、相米慎二(そうまいしんじ)監督は、大久保監督が尊敬する岩手県出身の映画監督。相米監督は、『翔んだカップル』やセリフ「カ・イ・カ・ン」で有名な『セーラー服と機関銃』など今でも新鮮な作風でハートウォーミングだと言える。相米監督は、残念ながら53歳で夭逝したのだが、遺品であるカチンコを黒田監督が持っていたのだ。まさかの、トークショー中にサプライズのプレゼントで、カチンコを大久保監督に託した。私も相米監督が好きなだけに、とても凄いことだ。大久保監督が大事そうに胸に抱えているのを見て、とても嬉しくなった。

 

大久保監督は、大槌町の現在を語った。「47箇所の仮設住宅で今までのコミュニティが分断されている。とても厳しい状態である。また大槌町以外の人にはどんどん風化してきている。その為、発信し続けなくてはならない。しかし、この映画は大槌町では上映しない。希望が得られないからだ。現在、撮影している映画を見てもらいたい。」

 

最後に大久保監督は、「大槌町は、縄文時代から人が住んでいた地域。何度も何度も今回のような津波があって大きな被害を受けていたと思われる。しかし、人が住み続ける。大槌には人を惹きつける何かがあるのではないか」とまとめた。何か溜飲が下がった気がした。大勢の観客もそうであったに違いない。いつまでも大きな拍手が鳴り止まなかった。

 

上映後、幸運にも大久保監督といろいろお話できた。町のホームーページ関連で大槌町にお邪魔させてもらっていること、暫定的にホームページを支え続けたエンジニア、現地に赴任して活躍するエンジニアなど素晴らしい人と出会えたことなど興奮気味にお話させて頂いたら、まるで町を代表する町長のようにとても感謝してくれた。気恥ずかしい。その為、私も駄文ながら、風化しないように、情報発信しようと感じた。

 

f:id:hiroxshi:20121021202548j:plain

 

「槌音」監督:大久保愉伊/日本/2011/日本語/23分 故郷の岩手県大槌町が被災、家族も被害に見舞われた監督が、津波に流されることを免れた震災前の貴重な映像を編み込んで綴った詩。山形国際ドキュメンタリー映画祭2011正式上映作品/ヒロシマ平和映画祭2011正式上映作品